東京地方裁判所 昭和45年(ワ)7255号 判決 1971年11月11日
原告
大川宏子
被告
有限会社高橋板金
ほか一名
主文
一 被告らは各自原告に対し金七四万二七八七円ならびに内金七〇万七七八七円に対する昭和四四年七月五日以降および内金三万五〇〇〇円に対する昭和四六年一一月一二日以降各支払い済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
二 原告の被告らに対するその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを五分し、その二を原告の、その余を被告らの、各負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分に限り、かりに執行することができる。
事実
第一請求の趣旨
一 被告らは各自原告に対し金一二四万八一三四円およびこれに対する昭和四四年七月五日以降支払済みに至るまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決および仮執行の宣言を求める。
第二請求の趣旨に対する答弁
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
第三請求の原因
一 (事故の発生)
原告は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)によつて傷害を受けた。
(一) 発生時 昭和四四年七月四日午前一一時五分頃
(二) 発生地 千葉県市川市八幡町二丁目九番一二号付近道路
(三) 加害車 自家用貨物自動車(以下「加害車」という。)
運転者 被告 高橋勝二(以下単に「高橋」という。)
(四) 被害者 原告(歩行中)
(五) 態様 被告高橋は加害車を運転して右道路を八幡方面から下行徳方面に向い進行中、折柄右道路を横断中の原告がいたのに、徐行することなく漫然と進行を続けたため、加害車を原告に衝突させた。
(六) 被害者たる原告の傷害の部位程度
頭部打撲、皮下血腫、四肢打撲擦過傷、右胸部打撲等
(七) 原告の後遺症
(1) 左下腿周径が二・五糎肥大、
(2) 左膝関節は長時間の正座により苦痛、
(3) 歩行中左膝に脱力感、
(4) 左大腿部に瘢痕ケロイド
二 (責任原因)
被告らは、それぞれ次の理由により、本件事故により生じた原告の損害を賠償する責任がある。
(一) 被告会社は、加害車を業務用に使用し自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条による責任。
(二) 被告高橋は、本件事故の発生につき、次のような過失があつたから、不法行為者として民法七〇九条の責任。被告高橋は前記道路の交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)を直進するに当り、左右の見通しがよくないのであるから、一時停止または徐行して左右の交通の安全を確認すべき注意義務があるのに、これを怠り、時速約二〇粁で進行した過失により本件事故をひき起したものである。
三 (損害)
(一) 治療費等
(1) 治療費 三二万五八九〇円
(2) 付添費 五万七六八四円
(ア) 職業付添婦によるもの 一万七一七六円
(イ) 親族の付添によるもの 四万〇五〇八円
(3) 入院雑費(一日二〇〇円、二七日分) 四六〇〇円
(4) 通院交通費 三四四〇円
(5) 医師に対する謝礼 三万一〇〇〇円
(6) 家政婦代 一〇万二〇〇〇円
原告は通院後も昭和四四年八月一日から同年九月三〇日まで家事労働ができない身体状況にあつたので、家政婦を使用した。
(7) 家政婦食事代 一万五〇〇〇円
(8) 子を他所で保育させたために支出した交通費 八五二〇円
(二) 慰藉料
原告の本件傷害による精神的損害を慰藉すべき額は、前記の諸事情に鑑み、金七〇万円が相当である。
(三) 損害の填補
原告は本件事故による損害について既に自賠責保険金一〇万円の支払いを受けたので、これを控除する。
(四) 弁護士費用
原告は被告らが右損害賠償債務の任意の弁済に応じないので、弁護士たる本件原告訴訟代理人にその取立てを委任し、原告は右弁護士に対し、手数料として金四万五〇〇〇円を支払つたほか、成功報酬として金五万五〇〇〇円を支払うことを約した。
四 (結論)
よつて、原告は被告ら各々に対し、本件事故による損害賠償として金一二四万八一三四円およびこれに対する事故発生の日の翌日である昭和四四年七月五日以後支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
第四被告らの事実主張
一 (請求原因に対する認否)
(一) 第一項の事実中、(一)ないし(四)および(六)は認める。(五)のうち、被告高橋が徐行しないで漫然と進行したとの点は争うが、その余は認める。(七)のうち瘢痕ケロイドの存することは認めるが、その余は知らない。
(二) 第二項の事実のうち、(一)は認めるが、(二)は争う。
(三) 第三項の事実のうち、(三)の事実は認めるが、その余の点は争う。(なお、仮に原告がその主張の医師に対する謝礼を支払つたとしても、僅かの治療に対しそのような高額の謝礼をする社会的慣行は存しないので、これを被告らに負担させるべきではない。また、被告高橋は原告に対し誠意をもつて再三示談交渉したのに、原告は自賠責保険金全額の支払をうけないうちに、弁護士に取立委任して不当に多額の賠償請求をしたものであるから、原告の弁護士費用は、本件事故の解決に必要な費用とはいえない。)
二 (事故態様に関する主張)
被告高橋は、加害車を運転して時速約二〇粁で進行して本件交差点に差しかかつたところ、原告が乳児を抱いて右方道路左側の歩道を通らないでその車道中央を歩行して同交差点に入つて来るのを右前方四・七米の地点に認めた。そのとき、原告が加害者に気付き一寸立ち止つたので、被告高橋は原告が加害車の通過を待つてくれるものと考え、そのまま進行しようとしたところ、原告が急に加害車の直前を急ぎ足で横断したため、急ブレーキをかけたが及ばず、加害車前部を原告に衝突転倒させたものである。
三 (抗弁)
(一) 過失相殺
(1) 右のとおりであつて、本件事故の発生については被害者たる原告の車道中央を歩行したうえ、走行中の自動車の直前を横断しようとした過失も寄与しているのであるから、賠償額算定につき、これを斟酌すべきである。
(2) 原告は医師より離床して歩行するなど運動をして、病状の早期回復に努めるように指示されたにも拘らず、これに従わなかつたため病状の回復が遅れたのであつて、原告の損害の拡大については原告の右過失も寄与しているのであるから、賠償額算定につき、これを斟酌すべきである。
(二) 損害の填補
原告はさらに自賠責保険金四〇万円の支払いをうけることができるので、右額は控除さるべきである。
第五事故態様に関する主張および抗弁事実に対する原告の認否
一 事故態様に関する主張および抗弁(一)の事実はいずれも否認する。
二 抗弁(二)は主張自体理由がないことが明らかである。
第六証拠関係〔略〕
理由
一 (事故の発生と責任の帰属)
本件事故の発生に関する請求の原因第一項(一)ないし(四)および(六)の事実は当事者間に争いがない。
(一) そこで、まず本件事故態様について検討する。いずれも〔証拠略〕を合わせると、被告高橋は、片側(東側)に歩道が設置されている幅員(車道部分)三・七メートルの道路上を加害車を運転して、時速約二〇キロメートルで南進し、東西に通じ片側(北側)に歩道が設置されている幅員(車道部分)四・八メートル(但し、右道路より東側では道路幅員が狭くなつている。)の道路との交通整理が行われておらず、左右の見通しの悪い交差点(以下「本件交差点」という。)付近にさしかかつた際、前方約五メートルの地点に進行右側(西側)の道路から歩行して右交差点を横断してくる乳児を抱えた原告を発見したが、原告が加害車の方を見たので立止つて加害車の通過を待つものと考え、そのままの速度で進行を続けたところ、数メートル左方(北方)から本件交差点に接近してくる加害車を見付けたが急げば渡れると思つて同交差点上を西から東に向い駈け足で横断しようとした原告に、自車を衝突させたうえ、狼狽のあまりハンドルの軸に足をひつかけたためブレーキを踏み損い、原告を約七メートル前方の地点までひきずつたこと、本件交差点付近、とくに原告が出てきた西側には商店街があつて、車の交通量は多くはないが人通りはかなり多いことが認められ、右認定に符合しない〔証拠略〕に対比して採用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
(二) 右認定事実によると、加害車を運転していた被告高橋は、本件事故につき、自動車運転手としては、本件交差点の左右の見通しが困難であつたから徐行して左右道路の交通の安全を確認すべき注意義務があるのに、これを怠つたばかりでなく、歩行中の原告を発見したのであるから、直ちに停止して原告を安全に横断させるべき注意義務があるのに、これを怠り、漫然と前記速度で進行を続けた過失を犯し、あまつさえ、狼狽のあまりブレーキ操作を誤つたため本件事故を惹起したのであるから、被告高橋が本件事故につき、不法行為者として損害賠償責任を負わなくてはならないことは明らかである。
(三) また、被告会社が加害車をその営む業務の用に供し、運行供用者の地位にあることは当事者間に争がないから、被告会社は運転手たる被告高橋に前記のとおり過失が認められる以上、免責される余地がなく、本件事故につき運行供用者として損害賠償責任を負わなくてはならないことも明らかである。
(四) しかし、他方前記認定事実によると、被害者である原告にも、本件事故発生について歩行者としては、加害車が接近しつつあつたのであるから、左右の安全を確認して危険な道路横断は避けるべき注意義務があるのに、これを怠つた過失があることおよび右過失が本件事故発生に寄与していることが認められる。
そして本件事故における被害者たる原告の右過失および被告高橋の前記過失、本件事故態様その他の事情を斟酌すると、原告の後記財産的損害額のうち一〇%に当る金員について過失相殺すべきものと考える。
(五) 原告が本件事故により請求原因一の(六)記載の傷害を負わされたことは当事者間に争がないところ、〔証拠略〕を総合すると、原告は前記傷害の治療のため、昭和四四年七月四日から同年七月三〇日まで二七日間日下部病院に入院したが、退院後も同四五年三月一九日までの間に四七回同病院に通院したほか、右期間中の同四四年九月一六日、同月三〇日の二日間日本医大附属病院に通院したこと、原告は前記傷害のほかに、昭和四四年七月一六日頃から左下肢血性静脈炎を起こしたために入院中は歩行できず、退院後も歩行障害が続いたうえ、胸部打撲の痛みもとれなかつたこと、原告は同年八月末頃医師に適度に家事を始めて、身体を馴らすように云われたが、まだ痛みがとれなくてなかなか思うように身体を動かせず、同年九月末日頃まではびつこをひきながら家の中を歩く程度で、買物、炊事、洗濯、子供の世話などはできない状況にあつたこと、原告は、前記治療を経た現在でも、左下腿が腫れていて正常な右下腿に比して二・五センチメートル程太くなつており、五分間以上の正座は右足のふくらはぎ部分が痛むためできないのみならず、階段の昇降時に左膝に脱力感があることがあり、さらには、左大腿部には三×一・五センチメートルおよび〇・五×一センチメートルの瘢痕ケロイドが残つている(瘢痕ケロイドの存在は当事者間に争がない。)ことが認められ、右認定に反する〔証拠略〕中原告の症状に関する部分は前掲各証拠に対比して採用できず他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
もつとも、〔証拠略〕には、昭和四四年九月一六日の時点において原告の胸部痛の訴えの記載がなく、右下腿部の疼痛がない旨の記載があるが、右は〔証拠略〕によると、ごく簡単なカルテの記載に基き作成されたものに過ぎず、これを以て、当時前記のような病状が完全に解消していたものと推認することができないばかりでなく、〔証拠略〕と併せ考えれば、前記認定の妨げとはならないものと云うべきである。
二 (損害)
そこで、以下原告の損害について検討する。
(一) 治療費等
(1) 治療費 三二万五八九〇円
〔証拠略〕によると、原告は前記傷害の治療費として合計三二万五八九〇円を支出したことが認められ、右は、前記の治療経過からして本件事故と相当因果関係にある損害と認めることができる。
(2) 付添看護費 三万九九七六円
〔証拠略〕によると原告はその入院期間中受傷のため動作不自由で身辺整理も意のごとくならなかつたため、付添が必要となり、昭和四四年七月四日から同月二二日までの一九日間は原告の祖母荒木みやが付添看護に当つたが、同月二三日から同月三〇日までは付添看護婦浜よしが付添看護をしたため合計一万七一七六円の出費を余儀なくされたことが認められ、〔証拠略〕中には原告入院の病院が完全看護だつた旨の供述があるが、右は〔証拠略〕に対比して信用できず、他に右認定に覆すに足りる証拠はない。そして右認定事実によると、原告は祖母荒木みやの付添についてはいまだ現実に付添看護費を支払つているわけではないにしても、右付添を必要とする傷害を蒙つたことにより被害者たる原告は、付添看護費相当分の損害を蒙つたといえるところ、右付添のなされた当時付添人費用が一日当り一二〇〇円を下らなかつたことは公知の事実であるから、右割合による合計二万二八〇〇円も原告の蒙つた損害とするのが相当である。
したがつて、付添看護費用合計三万九九七六円は原告が本件事故のため蒙つた相当の損害といえる。
(3) 入院雑費 四六〇〇円
原告程度の傷害をうけた者が入院期間中、日用品等の購入や連絡通信費等の雑費として一日当り金二〇〇円を下らない金員の支出を余儀なくされることは公知の事実であるところ、原告は、前記のとおり二七日間入院治療をうけたのであるから、合計して原告主張の四六〇〇円を下らない入院雑費を支出したものと推認される。
(4) 通院交通費 三四四〇円
〔証拠略〕を合わせると、原告は文京区駒込千駄木町にある日本医科大学付属病院に前記のとおり二日間通院した際、自宅のある市川から国電で途中まで行き、さらにそこから前記病院までタクシーを使用して、片道八六〇円、二日間で合計三四四〇円の交通費を支出し、同額の損害を蒙つたことが認められ、右認定に反する証拠はなく、原告の当時の症状等に照らし、右通院交通費は本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めることができる。
(5) 医師に対する謝礼 一〇〇〇円
原告は、医師に対する謝礼として三万一〇〇〇円を支払つた旨主張するところ、〔証拠略〕によると、原告が日本医大病院の医師を紹介された近所の藤田小児科の医師に謝礼として一〇〇〇円支払つたことは認められるが、原告が日本医大病院の医師に謝礼として三万円を支払つたとの主張事実については、これに符合する〔証拠略〕は、成立につき争のない乙第六号証に照らして採用できないのみならず、仮りに右事実が認められるとしても、原告の前記の症状、同病院で受けた治療内容等に鑑み、右謝礼は、到底本件事故と相当因果関係にある損害ということはできない。
(6) 家政婦代および同食事代 一一万五五〇〇円
原告が本件事故による受傷のため、日下部病院を昭和四四年七月三〇日退院した後も歩行障害、胸部痛等が続いたので、主婦でありながら、家事に従事することができず、同年九月末日頃まではびつこをひきながら家の中を歩く程度で、買物、炊事、洗濯、子供の世話などできなかつたことは前記一の(五)の認定のとおりであるところ、〔証拠略〕によると、原告は右期間中五六日間にわたり職業家政婦川上すぎの雇用が必要となり、家政婦賃金として合計一〇万二〇〇〇円を、その食費として合計約一万三五〇〇円を支出したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
(7) 子供保育のための交通費 一五八〇円
〔証拠略〕によると、原告は、本件事故当時、六カ月、三才、五才の三人の子供を抱えていたところ、(ア)原告が入院したため昭和四四年七月一三日頃から九月頃まで宇都宮市内にある原告の夫の実家に上の子二人を預けた際子供を送り届けた大人二名ないし三名の交通費として六六〇〇円(一名分片道 五五〇円)を支出したが、その中一回は原告の見舞のついでであつたこと(イ)原告は、上の二人の子供が帰宅した同年九月頃幡ケ谷にいる原告の母方に生後六か月の子を預け、その際、交通費として合計一九二〇円(一回片道一二〇円)を支出したこと、原告が右のように子供を預けることはその症状および家政婦との契約上必要であつたことが認められる。ところが右(ア)の交通費のうち必要なものは、一回は原告の見舞いのついでであるから、大人一名一回往復の交通費一一〇〇円であり、右(イ)の交通費のうち必要なものは、二回往復分四八〇円に過ぎないことが認められるから、前記交通費のうち本件事故と相当因果関係に立つ損害は、合計一五八〇円ということができる。
(二) 過失相殺
(1) 以上のとおり、原告の弁護士費用を除く財産的損害の合計額は、四九万一九八六円となるところ、一割の逸失相殺をなすべきことは前記一の(四)のとおりであるから、その結果、右損害は、四四万二七八七円となる。
(2) 被告らは、原告が医師の指示に従わなかつたため病状の回復が遅れた旨主張するが、本件全証拠によつても右主張事実を認めることができないばかりでなく、却つて、〔証拠略〕によると、原告は、昭和四四年八月末頃日下部医師に身体を動かし始めるように勧められたのに、痛がつてなかなか動かなかつたが、このことが原告の後の症状に影響を及ぼしてはいないことが窺われる。したがつて、被告らの右主張は採用することができない。
(三) (慰藉料) 三二万円
前記認定の原告の傷害、その治療状況、後遺症状のほか、原告の過失、本件事故態様、その他諸般の事情を総合すると、本件事故により原告が蒙つた精神的損害は、金三二万円をもつて慰藉するのが相当と考える。
(四) (損害の填補等)
そうすると、本件事故と相当因果関係にある原告の損害は金七六万二七八七円となるところ、原告は、本件事故による損害に関し、既に自賠責保険金一〇万円の給付をうけたことは当事者間に争がないので、これを前記賠償金七六万二七八七円より控除した六六万二七八七円が原告において支払を求めうる金員である。(なお、被告らは、原告が今後自賠責保険金残額四〇万円の支給を求めうるから、これも控除すべき旨主張するが、権利を有しても支払がない以上弁済とならないことは明らかであつて、主張自体失当というべきである。)
(五) (弁護士費用) 八万円
以上のとおり、原告は被告らに対し金六六万二七八七円の損害金を連帯しての支払を求めうるところ、〔証拠略〕を合せると、被告らは右損害金の任意の支払をなさなかつたので、原告はやむなく弁護士である原告訴訟代理人にその取立を委任し、着手金として四万五〇〇〇円を支払つたほか、成効報酬として五万五〇〇〇円を支払う旨約定していることが認められ、右認定に反する証拠はない。
しかし本件事案の難易度、審理の経過、認容額に照らすと、そのうち本件事故と相当因果関係に立つ弁護士費用相当分は八万円であつて、これをこえる部分まで被告らに負担を求めることはできない。
三 (結論)
以上判示の理由により、原告は被告らに対し本件事故による損害賠償として金七四万二七八七円およびこれより未払弁護士費用を控除した内金七〇万七七八七円に対する本件事故発生の日の後であることが明らかな昭和四四年七月五日以降、内弁護士費用未払分三万五〇〇〇円に対する本判決言渡の日の翌日であることが明らかな昭和四六年一一月一二日より各支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を連帯しての支払を求めうるので、原告の本訴請求は右の限度で理由があるから認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 加藤和夫)